自 2023年 4月 1日
至 2024年 3月31日
前年度(第51期)は、公益財団法人から一般財団法人へ移行後の初めての国際交流プログラム実施の年となりました。とは言え、主催法人が変更になっただけで、国際交流プログラムの内容は、基本的には以前と変わりはありません。しかし3年振りに再開をした国際交流であったのと、まだまだ新型コロナウイルス感染症の影響も大きく、交流規模、またプログラム運営にかかる諸手続き、特に新型コロナウイルス感染症予防の観点から行われていた日本政府の水際対策の対応には本当に苦労いたしました。それでも全員が無事帰国できたことは、参加者一人一人の自覚、引率者の適切な対応、受入れ団体の協力、また送り出された保護者や、参加者が所属するラボ・パーティのテューターの皆さん、また当財団を支えてくださる理事、評議員の皆さんのご理解とご協力の賜物と、感謝申し上げる次第です。
第52期は、第51期の国際交流が米国内のみでの訪問プログラムだったことに比すれば、訪問国も増え、また相互交流として受入れプログラムも復活することとなり、様相としてはコロナ以前に近付いたとは言えます。しかし参加者規模ではまだコロナ以前に戻ったとは言えません。北米は米国に加えカナダ交流が復活しますが、受入れ規模はさほど大きくなく、また米国の受入れ州も新しく加わったところもあれば今期は受入れを行わないところが出るなど、結果的に参加希望者全員を受け入れることができず、昨年に引き続き中学1年生を中心に約400名の参加希望者に延期をお願いをせざるを得ない状況となりました。
また、今期から4年ぶりに再開するニュージーランド交流もコロナ前の状態に受入れ家庭数が届かず、参加者を抽選で選ぶという、大変残念な事態の中での再開となります。韓国交流も同様で、韓国交流は夏に訪問と受入れが同時に再開となりますが、参加者数は日韓とも同数という条件の中、コロナ以前ほどの人数枠を確保するには至っていません。一方オレゴン国際キャンプが昨夏同様の規模で実施できるのは嬉しい限りです。
受入れのプログラムは、アメリカからの日本語研修、そしてホームステイプログラム、また、世界から参加者を受けるラングブリッジ日本語プログラムも4年振りの再開となります。なお日本語プログラムは、当財団を離れたラボ日本語教育研修所の協力を得て実施いたします。
何れの交流もコロナ前のように参加希望者がほぼ全員参加ができるという状態からは程遠く、国際交流参加を夢見ていた子どもたち、その保護者や幼い頃より成長を見守ってきたラボ・テューターの皆さんには申し訳ない気持ちで一杯です。それでも昨年より今年、今年より来年の交流の充実を目指して、今期も国際交流プログラムを安全と健康に最大限の注意を払いながら、十分と言えない実施状況の解消を目指して努めて参ります。
言語についての教育と研究活動では、東京言語研究所の主たる事業である理論言語学講座を新型コロナウイルス対策として始まったZOOMによるオンラインで実施に合わせ、特別講座では対面講義とオンラインを併用した講座の開催も実施し、対面講義へのニーズにも応えていきます。春期講座では、2日間で幅広い領域にわたる講義を展開します。また、言語を広い視野から捉える機会としての公開講座、言語学の専門領域を二日間で深く学ぶ集中講義および秋の講座として定着してきた日曜講座「教師のためのことばセミナー」も引き続き開催します。また、研究者を対象にした新企画「理論言語学の現代的課題」と題した新講座も立案され、その準備を現在進めています。
今年度の具体的な事業計画は以下のとおりです。
51年目、49回目を迎えるアメリカ交流は、7月下旬から8月下旬まで約4週間、引率者を含め中学生・高校生の当財団会員約360名が全米21州にホームステイの予定です。提携団体は、米国4-H、ペンシルバニア州メノナイト協会、ユタ州ベアリバー・インターナショナル・エクスチェンジです。
また今夏、34名の青少年が来日予定です。来日者は全国各地の当財団会員宅に4週間ホームステイしながら日本の青少年と交流する予定です。
49年目、47回目を迎えるカナダ交流は、7月下旬から8月下旬まで約4週間、引率者を含め中学生・高校生の当財団会員約40名がホームステイの予定です。なお提携団体はカナダ4-H・青少年交流委員会、コンタクトカナダ、JCコミュニケーションズです。新型コロナウイルス感染症の影響を受け、今期はカナダから来日の予定はありません。
今冬、数名の青少年が来日を希望しています。夏期の訪問はありませんが、今後相互交流を前提として検討を進めてまいります。
22年目、19回目を迎えるニュージーランドとの交流は、新型コロナウイルスの影響を受け、4年振りの開催となります。今夏はタウランガ・ボーイズカレッジ、タウランガ・ガールズカレッジ(高校)タウランガ・インターミディエットスクール(中学)の提携校に加え、新たに、カティカティハイスクールへ65名の中学、高校の当財団会員を派遣する予定です。
現地校から今冬の来日に関する問い合わせもあります。現地受入れ団体と連携を取りながら、日本、ニュージーランドの双方の青少年に交流がスタートできるよう尽力します。
37年目、35回目となる中国との交流は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、中止としました。なお、提携校の北京月壇中学校からは、交流を再開したいとの連絡を受けています。来期から訪問、来日とも再開できるよう今期は準備の期間とします。
再開23年目、20回目の韓国との交流は、4年振りに再開となります。提携団体は「社団法人韓国ラボ」です。今夏は訪問、来日とも実施しますが、訪問プログラムには既に多くの参加希望者があり、来日、受入れとも15名の定員のため抽選を行う予定です。
26年目のオレゴン国際キャンプは、昨年3年振りに交流を再開しました。本プログラムは自然の中での協力意識を育てつつ、キャンプリーダーとしてのスキルも身につけ、自然との共生への理解を深める目的で行われます。キャンプには同世代のアメリカ人学生も参加し、友情を育みながら相互理解を促進する機会となります。今夏も24名の当財団の会員である中学生から大学生が、引率者2名と様々な野外活動に挑戦する予定です。
提携団体はオレゴン州ポートランドに本部を置く、オレゴン科学産業博物館(OMSI)です。
今夏の国際交流に参加できなかったラボっ子を対象にした、インターン研修生やラボっ子相互のオンライン交流会
(1)概況:36年目を迎えるラボ高校留学プログラムは、過去1,414名の高校生をアメリカ、カナダに派遣してきました(現在留学中の18名を含む)。高校生年代の若者にとって、外国での約一年間にわたる長期異文化体験は強烈なインパクトを与え、その後の人生に大きな影響を与えています。現在、アメリカ12名(内男子2名)、カナダ3名(内男子1名)が参加を予定しています。
現在留学中の第35期留学生は、新型コロナウイルスの世界的な流行下にありましたが、第33期から延期した1名(カナダ)を含む18名(アメリカ:12名 カナダ:6名)が、第35期留学生としてアメリカとカナダの高校に約1年間留学中で、全員元気に過ごしています。
(2)渡航に関する情報:アメリカは、18歳以上はワクチン接種証明と宣誓書が入国に必要。ワクチンを接種していない18歳未満は、入国後検査を受ける必要があります。カナダは既に出入国に条件はありません。また現在のところ、日本に入国するためには、新型コロナワクチンの3回の接種証明の提示が必要となります。もし3回未満の接種の場合は、昨夏同様、出発72時間前のPCR検査で陰性である必要があります。昨夏も、一見元気なのですが、検査をしたら陽性だったという参加者が結構おり、検査場を探すのにひと苦労がありました。いずれにしてもスムーズな入国のために、スマートフォンによる予防接種の証明、入国手続きの簡略化を図る、ファストトラックが必要となっています。
(3)準備活動:親子オリエンテーション(オンラインで実施)、全国事前研修合宿等(五月の連休に代々木のオリンピックセンターにて実施)の事前準備活動に参加します。
(4)出発:米国への留学生は、7月下旬より、カナダへの留学生は、8月下旬に、グループ、もしくは個人単位で日本を出発し滞在先まで移動します。到着後に行われる到着時オリエンテーション(アメリカは、4-Hはシアトル7名、ASPECTは5名で場所は未定(前回はアルバカーキ)、カナダはバンクーバーで3名)は、前期はオンラインでしたが、今期は現地で実施の予定です。留学先ではホームステイをしながら現地の公立高校に約10か月通学します。
(5)受入れ団体:米国の提携団体は、米国国際教育旅行基準協会(CSIET)に認可をされている非営利団体―米国4-H、Aspec Foundationです。カナダの提携団体は、各州・各地区の教育委員会(BC:Okanagan Skaha, AB:Red Deer)です。
今年35年を迎えるラボ・インターンプログラムでは、アメリカから2名の大学生年代の学生を招聘予定です。滞在中は当財団会員家庭にホームステイをしながら、日本語学習、各自の日本文化研究、青少年との交流、海外青少年の受入れプログラム対応などの活動に参加します。
日本文化研究については、各自が興味をもつ日本文化について、学習・研究をおこない、帰国前にその研究成果を発表します。
例年、3月末から4月にかけて、全国8ヶ所(仙台・東京・埼玉・名古屋・大阪・広島・香川・福岡)で、ラボ国際交流参加者を対象にした「ラボ国際交流のつどい」を開催してきましたが、新型コロナウイルス発生以降形態を変更し、国際交流出発前に、それぞれの地域で壮行会を兼ね、参加者一人ひとりが自己紹介と決意表明を行う予定です。
米国4-Hとの交流では、円滑なプログラム運営のために全米各地の4-H代表者との日米交流委員会を構成し、合同委員会を年2回開催してきました。例年であれば11月に米国にて合同会議と全米交流担当者会議が開催され、当財団スタッフと普通会員であるラボ・テューターの代表が参加しますが、現在のところ、実施の是非、また実施に当たっての形態はまだ未定です。内容も、通常であれば交流担当者の研修を中心に、交流プログラム充実のための様々な課題討議を行いますが、この点も今後4-Hと検討していきます。
例年、米国ユタ州にある交流団体、ファミリーエクスチェンジの代表と、米国4-Hとの合同委員会の日程に合わせてミーティングを行ってきました。ユタでも昨夏、3年振りに交流が復活しましたが、事情によりコーディネーターがユタ州ではないところに在住していたこともあり、ラボ国際交流プログラムの歴史上初めて、参加者のホストファミリーが未決定のまま現地に入るという前代未聞の事態を引き起こしました。このことから、今期については当該コーディネータ―とはプログラム実施の契約を結ぶことは無く、別途コーディネーターを依頼し、受入れ規模も大幅に縮小し実施の予定です。
今期は1972年から始まったラボ国際交流が50周年を迎えます。今だ新型コロナウイルス感染症の影響を軽視できない状態の中、これ迄の周年行事のような大規模な交流行事は見合わせ、現下の国際交流参加希望者と受入れホストファミリー家庭数のアンバランスを解消すべく、全国各地からビデオメッセージを募り、それを受入れ団体側と共有し、現地での受入れホストファミリーの拡大に役立てていただこうと企画中です。
東日本大震災後、各国大使館・企業・NPO法人などの協力のもと、被災児童の海外派遣事業「Support Our Kids Project(SOK)プロジェクト」は2025年まで延長をすることが決まっています。当財団も状況に応じて協力の予定です。
理論言語学講座は1966年に開設され、言語学に関心を持ちながら大学の内外で十分な学習の機会・場所が十分ではない研究者・新進の人材の育成を目的に開催されています。
今年度の理論言語学講座は「言語学概論」(窪薗晴夫先生他)、「生成文法入門」(髙橋将一先生)、「認知言語学Ⅱ」(池上嘉彦先生)等の講座20科目を開講します。また、今年度は意識的に女性研究者を例年より多く登用し、ジェンダーバランスへの配慮にも取り組んでいきます。
春期講座は、現代言語学の主要な研究領域やアプローチを受講者に紹介し、魅力ある言語学の世界に誘うことを目的に実施されます。今年度は4月15日と16日の2日間、16科目をオンライン配信で開講します。
理論言語学を中核に据えた理論言語学講座、春期講座、集中講義に加え、夏期講座・公開講座など現代社会のニーズに合わせた講座を開催し、言語学研究、言語教育に携わる多くの方々の多様な要望に応えてきました。今年は公開講座(3回)・集中講義(2回)、日曜講座「教師のためのことばセミナー」に加え、「理論言語学の現代的課題」と題した研究者向けの講座を大津由紀雄理事が発起人となり新たに開催することになりました。
今夏、4年振りにプログラムが再開し、21名が6月中旬から7月上旬まで来日します。当財団会員の日本人家庭にホームステイしながら、3週間の日本語研修に参加しますが、日本語教育に関しては、ラボ日本語教育研修所(赤門会)が引き続き担当します。
17年目を迎えたカナダ・ラングブリッジ教育センター(LanguBridge Education Centre)との提携の日本語研修プログラムも、今夏4年振りに再開となります。引率者1名を含めたアメリカ、カナダ、ヨーロッパなどの高校生約21名が7月中旬から8月上旬まで3週間の日本語研修プログラムに参加予定です。日本語教育に関しては、ラボ日本語教育研修所(赤門会)が担当します。
事業概要を紹介し、青少年国際交流や異文化理解教育の促進を行いうために、広報誌『ラボの世界』を年4回発行します。今期も全編ウェブ版で作成し、ラボ国際交流センターのホームページ上に掲載します。
以上